オリガ・ホメンコ先生が、『キーウの遠い空-戦争の中のウクライナ人-』ご出版されました
6月にご講演「ウクライナから先生と平和を考える」を行って下さったオリガ・ホメンコさんが、ご著書『キーウの遠い空-戦争の中のウクライナ人-』を中央公論社から出版されました。2022年2月24日にロシアの侵攻が始まってから、ウクライナの人々の生活がどのように変わったのか、戦争に至るまでのウクライナの歴史と背景にもふれながら綴られています。
戦時には、スマホは自分たちを救うものから、「危険をさらすもの」に変わりえるという一節には虚を突かれました。日本国内の報道では、ウクライナから国外に逃れた人が、スマホで家族と連絡を取り合い、ひと時の安心を得る場面が映し出されていたからです。しかし一方で、スマホに記録された情報や写真を見れば、その人の過去と現在がすべてわかってしまいます。実際に、ウクライナの国旗や民族衣装などの写真が見つかると、危険な目にあった人もいたそうなのです。
もしかしたら私たちは、報道やSNSなどから限られた映像、情報を得て、安全なところから自分たちに都合の良い解釈を施して蓄積しているだけなのかもしれません。「その解釈の積み重ねが、何も行動しないことの理由になってはならない」オリガさんのご著書から、そんな強いメッセージを受け取った気がします。
オリガさんにとってこの本を書くのは、馴染みがある場所の破壊、人々の逝去、友人からの思いもかけない言葉に再び向き合う、つらい作業であったに違いありません。にもかかわらず、こうして著し私たちに伝えてくださったことに、心から感謝と敬意を表します。(島津礼子)